日本の高層ビル災害対策
高層建築物は、シンボル的存在であり、現代社会の象徴的な建造物です。高さを追及することは、建築技術の限界への挑戦と言えます。特に地震の多い日本では外国に比べ、より安全性が求められる環境にあります。日本にある現在の高層建築物、特に多くの人が長時間滞在して働くオフィスビルにおいて安全性はどのように保たれているのか、ご紹介します。
現代社会のシンボルである高層建造物
現代都市において高層建築物は、限られた土地に多くの人が集まって生活や経済もしくは社会活動を行うために、高いビルを建てるのが効率的です。高層建築物は目立つことから、外観など特徴があると、シンボル的な存在になります。また高さを追及することは、建築技術の限界への挑戦と言え、特に地震の多い日本では外国に比べ、より安全性が求められます。象徴的な意味を持つ高層建築物の安全性はどのように確保されているのでしょうか?詳しくご紹介していきます。
高層建築物の定義とその由来
一般に「高層建築物」と呼ばれる建物とは、どのような建物でしょうか?
実は高層建築物について、建築基準法や施行令の中では厳密に定義をされていません。建築関係法令の中において、「都市計画法」と「消防法」を参照してみると、都市計画法上では、低層、中層、高層の区分は、実務上それぞれ、1~2階、3~5階、6階以上とされていることが一般的です。また、最も明確に定義されているのが消防法で、高層建築物を「高さ31mを超える建築物をいう」としています。この基準は1919年に公布された市街地建築物法の絶対高さ制限までさかのぼり、当時の丸の内の東京海上ビルディングの高さや、はしごつき消防車が届くとされた高さに基づいているとされていて、現在に至るまでのひとつの指標とされています。
ちなみに、超高層建築物とは、広辞苑では高さ100m以上の建物と記されています。また建築学用語辞典や建築大辞典では、100m以上、または15階程度以上と記されていますが、高層建築物と同じく、法規の中では厳密な定義はされていません。ただし、100という切りのよい数字であることも含め、超高層建築物の高さの基準として100mが一般的に認知されているとも言えます。
耐火性能と階数
高層建築物の火災は、鎮火が難しい上、避難ルートが限定されているため避難時間が長くかかります。そのため高層建築物は燃えにくいことが大前提となります。
火災による死亡原因では、煙による窒息が大きな比率を占めます。そのため、建築材料に関する基準や、耐火性能の技術的な基準が詳細に定められています。特に、耐火性能については階数によって区分されており、高層であればあるほど、低層部に高い基準が求められています。その他、15階以上、地下3階以下の各階には、特別避難階段の設置が義務付けられており、物品販売業の店舗の場合は、より厳しい基準が定められています。
特別避難階段とは、外気を取り込むことのできる窓や排煙設備を持つ付室またはバルコニーを伴った避難階段のことで、階段室への煙の侵入を防ぎ、より安全性を高めることが出来ます。
地震対策 耐震構造の設計方法
1981年の改正によって建築基準法の構造耐力に関する規定が大幅に強化され、それ以降の新築建物はそれまでの2倍ほどの耐震性を持つようになりました。この改正で定められた一連の構造規定は「新耐震基準」、これを満たす建物は「新耐震建物」と呼ばれています。
新耐震基準の最大の特徴は「2次設計」と呼ばれる検討内容が追加されたことです。つまり、数十年に1度程度の中地震動で発生する各階の変形量を一定範囲に止めるため、通常の耐震設計に加えて、具体的な検討方法が3段階の建物の高さ(13m以下、13m~31m、31m~60m)に応じた設計が用意されました。
また、国民の生命、健康及び財産の保護を目的として掲げられている建築基準法においては、現在の耐震構造は中地震までは傷みませんが、数百年に一度程度の確率で発生する大地震では倒壊は防いでも各所が傷むことは許容しています。
建物に働く外力は地震力と思われがちですが、高層ビルの場合はビルの揺れは地震だけでなく、風力の方が大きくなります。その風による揺れを抑えるためにも耐振構造が活用されています。
制振構造に用いられているダンパーには様々な種類があり、例えば横浜ランドマークタワーは、振り子式のダンパーを用いて強風時の揺れを4割ほど低減させています。また、横浜マリンタワーでは今まで海風によって日常的に揺れが生じていましたが、液体の入った容器を揺らすと中身が少し遅れて揺れるスロッシングという現象をいかしたオイルダンパーを用いて揺れを抑えることを実現致しました。
制震構造と免震構造のちがい
高層ビルの耐震構造には主に制震構造と免震構造があります。下記にその違いを説明させて頂きます。
(日建設計HP参照)
制震構造
建物内に配置した制振部材(ダンパー)で、地震エネルギーを吸収します。
ダンパーが地震エネルギーを吸収し、建物重量を支える主架構の損傷を抑えます。大地震に主架構の損傷をゼロにすることも可能です。
大地震後にも基本的にダンパーの交換は不要です。ただし損傷程度を調査し、万一、性能の低下したものは補修・交換することで、地震前の状況に戻すことが可能です。
耐震構造に比べ、風揺れや地震時の揺れを小さく抑えることができます。耐震構造に比べ、ダンパーの効果により建物の層間変形は小さくなります。建設費に占めるダンパー費用の比率は小さく、経済的に高い耐震性能が得られます。ダンパーを適切に配置できる平面計画が重要です。
免震構造
アイソレータで浮かせ、ダンパーで地震エネルギーを吸収します。
免震層のダンパーで地震エネルギーを吸収し、建物に損傷を与えません。
大地震後にも基本的にダンパーの交換は不要です。ただし、損傷程度を調査し、万一性能が低下したものは、補修・交換することで、地震前の状態に戻すことができます。耐震・制振構造に比べ、建物の揺れは小さくなります。
免震層は数十㎝の変形に追随することが必要ですが、駐車場等に利用可能です。耐震・制振構造に比べ、建物の層間変形は小さくなります。初期設定費はやや高めとなりますが、高い耐震グレードを達成するには他の構造により経済的です。自由度の高い建築計画が可能です。
制震構造、免震構造の耐震グレードは、建物の高さとも関連します。各々の建築構造システムは適材適所に用いる必要があります。建物の高さによる耐震グレードのイメージ
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