オフィスの地震対策|従業員の生命・安全を守る!
東日本大震災を契機にマグニチュード7級の首都直下地震の発生確率が急激に高まりました。
政府の地震調査委員会は、南関東で30年以内に70%の高い確率で大地震が発生すると予想をしています。
いつ起きてもおかしくない大地震に対するオフィスの地震対策・防災対策は進んでいますか?
東日本大震災を教訓に 今一度、従業員の生命・安全を守るオフィスの地震対策・オフィスの防災対策の確認、見直しをしましょう。
東京都は被害想定を見直し
東京都では、東日本大震災を踏まえ、現行の被害想定を見直しました。客観的なデータや科学的な裏付けに基づき、より実態に即した被害想定へ と全面的に見直しを行っています。
再検証により首都直下地震はM7.3、追加により海溝型地震はM8.2、活断層で発生する地震はM7.4と被害想定をしています。
また、フィリピン海プレート上面の深度が従来の想定より浅いという最新の知見を反映し、震源が浅くなるため、従来の想定より震度が大きくなり、 最大震度7の地域が出るとともに、震度6強の地域が広範囲となる想定です。区部の約7割は震度6強の範囲とされ、津波による被害想定も追加 されています。
東京都は被害想定の結果を踏まえ地域防災計画を平成24年11月に修正しました。
東京都地域防災計画では、基本概念である『自助・共助・公助』の連携の下、総合的な防災対策の推進のため、事業所による自助・共助の強化が 求められています。
事業所による自助・共助の強化
東京都地域防災計画によると事業所においては、発生時に、生命の安全確保、二次災害の防止、帰宅困難者対策、事業の継続、地域貢献・地域 との共生を推進するため、次のような対策を推奨しています。
- 事業所防災計画や事業継続計画の作成
- 社屋内外(オフィス)の安全化、防災資器材や水・食料等の非常用品の備蓄(従業員の3日分が目安)等、従業員や顧客の安全確保対策
- 事務所等の耐震化、バックアップのシステム等の確保、災害対策要員の確保等
- 防災市民組織等との協力など地域社会の安全性向上対策の推進
- 訓練の実施
オフィスの防災・地震対策の3大要素
オフィスにおける防災対策・地震対策には、3つの要素があります。
1つ目は、オフィスのある建物そのものの耐震性・耐震対策による地震対策。
2つ目は、オフィス内における家具類の転倒防止等の地震対策。
3つ目は、発生時を想定した事前準備としての防災対策です。
オフィスにおける地震対策・防災対策の3大要素について検証してみましょう。
いわゆる新耐震基準に適合しているか?
オフィスのある建物そのものの耐震性・耐震対策の確認事項としては、いわゆる新耐震基準に適合しているかを確認しましょう。
新耐震基準とは、1978年の宮城県沖地震(M7.4、震度5)で甚大な家屋倒壊被害が発生したことを機に建築基準法(施行令)の改正による 新しい耐震基準のことです。
新耐震基準は、1981年(昭和56年)6月1日に施行され、この日以降に建築確認を受けた建物については、新耐震基準が適用されています。
当時のオフィスビル建築の工期から考えると竣工が1984年以降の建物が確実と言えます。
また、ビルのリニューアル工事等で耐震補強工事などを実施しているビルもありますので、新耐震基準前の建物においては、実施の有無の確認が必要となります。
(>>新耐震基準の貸事務所特集(東京) ※耐震補強したオフィスビルも含みます。)
オフィスのある建物が自社ビルの場合は、自社による地震対策が可能ですが、賃貸ビルの場合は、所有者や貸主に地震対策が委ねられてしまいます。
状況によっては、新耐震基準を満たす賃貸ビルへのオフィス移転による地震対策が必要になります。
レイアウトと家具類の転倒防止対策が鍵!
オフィス内における地震対策・耐震対策の確認事項としては、オフィスレイアウト上の避難経路、オフィス内の動線確保とオフィス家具類の転倒・落下・移動防止などの地震対策が必要となります。
オフィスレイアウトは、業務上の効率やコミュニケーションなどの要素を考慮して設計されていると思いますが、地震対策・防災対策の観点から今一度見直しをしてみましょう。
具体的には、落下の恐れがある高い所に物を置いていないか?(特に避難時の動線となる箇所)
キャビネットの転倒により人に重大な被害を与える可能性はないか?
避難通路の障害になるような箇所に物を配置していないか?等、チェックをしてみましょう。
オフィス家具類の転倒・落下・移動防止対策として、キャビネットやパーティションなどの壁や床固定、連結などの地震対策をすることが重要です。
長周期地震動について
近年発生した地震でケガをした原因の約3割~5割が、家具の転倒・落下・移動によるケガになります。
高層階は、下層階に比べて揺れが大きくなる傾向があります。(長周期 地震動)
家具の転倒や落下の地震対策に加えて「家具移動」の地震対策もシッカリと行うことが大事になります。
備蓄確保と安否確認・情報収集手段の確保
大型地震の発生時を想定した事前準備として、施設内待機のための備蓄確保と安否確認・情報収集手段の確保が重要となります。
施設内待機のための備蓄確保については、『東京都帰宅困難者対策条例』では従業員が施設内に留まれるように、 最低3日分の水・食料等の備蓄を求めています。
また、安否確認・情報収集手段の確保についてですが、東日本大震災では、多くの人が携帯電話の通話による安否確認を試みましたが、うまく 連絡が取れませんでした。
発生時における従業員との連絡手段・手順や従業員の家族等との安否確認手段を従業員へ周知しておくことが必要 になります。
オフィスの地震対策・防災対策は大丈夫?!
オフィスの地震防災対策の必要性は、誰しもが感じるところではありますが、実際の対策は、日常業務を優先して後回しになりがちです。
しかし、いつ起こるかわからない、それこを明日起こるかもしれない大地震に対する対策は、従業員の生命・安全を守るために重要な「企業の責任」と言えます。
オフィスの地震防災対策の3大要素に関するチェックリストを用意しました。あなたのオフィスの地震防災対策度をチェックしてみてください。
オフィスの地震対策・防災対策
□Q1.オフィスの建物は1984年以降竣工である。または耐震補強工事をしてある。
□Q2.オフィスの建物は避難経路が2方向以上ある。
□Q3.オフィスの建物の壁や柱などに亀裂や歪みがない。
□Q4.消防法等に順守した火災報知機等の設置がしてある。
□Q5.避難経路の動線を考慮したレイアウトになっている。
□Q6.オフィス家具等の転倒・落下・移動防止対策をしている。
□Q7.飛散が予想されるガラス等の飛散防止対策をしている。
□Q8.施設内待機のための3日分の水・食料等の備蓄をしている。
□Q9.従業員との連絡手段・手順や従業員の家族等との安否確認手段が従業員へ周知されている。
□Q10.事業所防災計画等の作成と訓練による検証がされている。
チェックをした箇所が多い程、地震防災対策が進められていることになります。
チェックリストを参考に、チェックが付かなかった箇所の対策を進めていきましょう。次は各項目に対する対策アドバイスです。
地震対策・防災対策アドバイス
<Q1、 Q2、Q3にチェックが付かなかった場合>
1~3の対策は、地震対策・防災対策を行う上で、最も基礎となる部分です。
オフィスの建物そのものに課題があります。
この箇所にチェックが付かないオフィスはその他の地震対策を行っていたとしても 意味を成さない可能性が高くなります。
自社の建物の場合は、早急に建物の耐震対策が必要であり、 賃貸ビル等の場合は、オフィス移転を早急に検討することをおすすめします。
<Q4、Q5、 Q6、Q7にチェックが付かなかった場合>
4~7の対策は、オフィス内の地震対策・防災対策に課題があります。
早急にオフィス内の課題箇所を把握し、オフィスレイアウトの変更や オフィス家具類の転倒・落下・移動防止対策の実施をおすすめします。
平成25年8月に東京消防庁が発行している『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック(PDF) 』を参考に対策を進めましょう。
<Q8、 Q9、Q10にチェックが付かなかった場合>
8~10の対策は、万一、地震などが発生した際の準備に関する項目です。
東京都『 東京都帰宅困難者対策ハンドブック(PDF) 』を参考に対策を進めましょう。
従業員の生命・安全を守るオフィスの地震防災対策は、企業の使命です。
従業員が安心して仕事が出来るように、いつ起こるかわからない地震等に備えたオフィスの地震防災対策を進めて行きましょう。
<参考資料>
- 東京都 東京都地域防災計画(震災編)概要版
- 首都直下地震帰宅困難者等対策協議会
- 事業所における帰宅困難者対策ガイドライン
- 東京都帰宅困難者対策ハンドブック東京消防庁
- 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
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